🧑🏫 私の体験から始まった数学ノートへの試行錯誤
高校・大学受験期、私の数学と物理の学習スタイルは、問題集をとにかく解きまくり、わからないものは解答を見て理解し、その理解をルーズリーフにまとめていくというものでした。
物理においてはこの方法が非常にうまく機能しました。というのも、物理は自然現象をモデル化しており、限られた数の基本法則や考え方に従って問題が構成されているため、似たような問題が繰り返し出てくるからです。ミスした問題は「同じパターンの問題」としてルーズリーフにまとめ、そこに自分のコメントや図解を加えてストックすることで、試験で同様の問題に出会ったときには自信を持って対応できるようになりました。
一方で、数学においてはこの学習法がうまく機能しませんでした。いくらルーズリーフを厚く重ねても、「見たことのない形式の問題」や、「知っている定理の使い方が違う問題」が無限に出てくる感覚があり、物理のように『パターンを積み重ねてカバー』するという手法では限界を感じたのです。数学は基本的な定義から無数の定理が論理的に展開していく構造を持ち、結果的に“道筋が一本ではない”という特性が、パターン学習を難しくさせていたのだと思います。
🔄 試行錯誤のなかで見えたノート構築の課題
地理の学習においては、1枚の紙にすべてを集約して繰り返し見る、という方法がうまくいった経験があり、数学でも「1枚にまとめられた知識」が学習の支えになるのではと考えて、定義や定理をビジュアルに再構成してみようと試みました。
しかし、数学の情報量の多さや、同じ定義でも参考書ごとに微妙に表現が異なるという状況から、知識を1枚に整理するというのは、次第に難しくなってきました。
ここで、私は「一つにまとめること」よりも、「接続できること」が重要だと気づきました。
📂 デジタルノートとURLリンクの可能性
大学に入り、学習のスタイルを紙からデジタルに移行したことで、ノートの使い方が大きく変わりました。
今はGoogleドキュメントやNotion、Obsidianといったデジタルノートアプリを使い、ノート同士をURLでリンクすることができます。
この仕組みのおかげで、ベースノート(中心となるノート)に必要最低限の情報を記述しつつ、関連する応用定理・例題・別視点の説明を他ノートに書き、必要に応じて「→詳しくはこちら」スタイルで相互にリンクさせるネットワーク構造を作ることができるようになりました。
✨ ベースノート+リンク構造という発想
この経験から導き出した一つの方針は:
> 「ベースノートは幹。あとの知識は枝葉としてリンクで繋ぐ」
数学の学習は、初学の段階では細かく章ごとに定義・定理・例題を記述する流れで進んでいきますが、学習が進むにつれて「複数の章が統合され、より抽象的な構造に昇華される」ようになっていきます。
このとき、ベースノートの中に「この章の発展形としてトポロジーにおける開集合の概念がある」などといった形で接続の文脈を残しておけば、応用的な知識も自然な形で枝分かれしていきます。
🔁 ノートの構造を階層的に考える
この考え方に基づいて、以下のような階層構造を取ることにしました:
1. ベースノート(学部1〜2年向け)
– 最も基本的な定義、定理、例題を記述
– 学習の起点、再確認用の参照点
2. 章ノート(テーマごとに分冊)
– ベースノートの各セクションからリンクされる
– 例:『位相空間論』、『実解析』、『線形代数』など
3. 応用ノート(視点・定理ベース)
– 複数章にまたがる視点、別解、他分野との接続
– 例:「距離空間と位相空間の比較」、「完備性と収束の違い」など
このようにして、ノートが「まとめる」ものから「接続する」ものへと役割が変化していきました。
✍️ 書くことの目的も変わっていく
昔は「覚えるため」にノートを書いていました。今は「理解を構築するため」にノートを書いています。
単に書き写すのではなく、
– なぜこの定義が必要なのか?
– この定理は何を言っていて、どこで使われるのか?
– 他の定理とどう繋がっているか?
を言語化しながらまとめることで、数学の学習は“静的な蓄積”ではなく、“動的な理解の構築”へと変化していきました。
📄 これから試す戦略:1冊のベースノート方式
今後は、1つのデジタルノートを「母艦」とし、そこに知識を集約しながら、深掘りや応用的な内容はリンクで外に展開するというスタイルで続けていこうと考えています。
章ごとにノートを分けると、上級になるにつれて複数章が統合されていくため、その流れを「物理的なノート分け」ではなく、「構造的な接続」で吸収していく。
ノートとは単なる記録ではなく、「思考のネットワーク」であるというのが、私のいまの到達点です。
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