📐 逆関数定理|単調関数と微分可能性

📐 逆関数定理|単調関数と微分可能性 📐 数学ノート
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🔎 はじめに

逆関数定理は、開区間上で定義された関数が「狭義単調増加(または減少)」という性質を持つとき、その関数には必ず逆関数が存在し、さらに元の関数がある点で微分可能かつその傾きがゼロでなければ、逆関数もその対応点で微分可能になるという強力な結果です。

この記事では、逆関数定理の背景や意義を丁寧に解説し、その証明の主要なステップを数式や表を使って具体的に示します。実解析の基本概念を復習しながら、単調関数と微分可能性の関係を理解し、応用例として二次関数や指数関数の逆関数への展開も紹介します。

📏 定理の内容

逆関数定理は以下の3つの結論から構成されます。

1. 逆関数の存在と一意性
– 関数 $f: I\\to\\mathbb{R}$ が開区間 $I$ 上で狭義単調増加(または狭義単調減少)なら、$f(I)$ 上に連続な逆関数 $\\varphi=f^{-1}:f(I)\\to I$ が一意に存在します。
– すなわち、$f$ が単射であることから、任意の $y\\in f(I)$ に対しただ一つの $x\\in I$ が存在して $f(x)=y$ を満たし、\\(\\varphi(y)=x\\) と定義できます。

2. 逆関数の単調性と連続性
– $f$ が狭義単調増加なら、$x_1 – $f$ が狭義単調減少の場合は $x_1f(x_2)$ となり、逆関数は狭義単調減少となります。
– さらに $\\varphi$ は連続であり、任意の $y_0=f(x_0)$ に対し、$I$ が開区間であるために $\\exists\\rho>0$ で $(x_0-\\rho,\\,x_0+\\rho)\\subset I$ が成り立ちます。その上で $0<\\varepsilon<\\rho$ を取ると
$$f(x_0-\\varepsilon) となり、
$$\\delta=\\min\\{y_0-f(x_0-\\varepsilon),\\;f(x_0+\\varepsilon)-y_0\\}>0$$
と置けば $|y-y_0|<\\delta$ であれば
$$f(x_0-\\varepsilon) よって $|\\varphi(y)-x_0|<\\varepsilon$ となり、$\\varphi$ は連続であることが示されます。 3. 逆関数の微分可能性
– 追加の仮定として、ある点 $x_0\\in I$ で $f$ が微分可能かつ $f'(x_0)\\neq0$ とします。対応する $y_0=f(x_0)$ において、逆関数 $\\varphi$ も微分可能であり、
$$\\varphi'(y_0)=\\frac{1}{f'(x_0)}.$$
– 証明は数列 $y_n\\to y_0$ ($y_n\\neq y_0$) を考え、$x_n=\\varphi(y_n)$ と置く一連の議論です。\\(\\varphi\\) の連続性により $x_n\\to x_0$ が得られ、差分商を
$$\\frac{x_n-x_0}{\\,y_n-y_0\\} =\\frac{x_n-x_0}{\\,f(x_n)-f(x_0)\\}\\cdot\\frac{f(x_n)-f(x_0)}{\\,y_n-y_0\\}$$
と分解します。前者の極限は $1/f'(x_0)$、後者は $1$ に近づくため、総合して $\\varphi'(y_0)=1/f'(x_0)$ が得られます。

以上が逆関数定理の3つの結論です。

🧮 証明のステップまとめ

以下に逆関数定理の証明を段階的にまとめます。

1. 単射性と逆関数の定義

狭義単調増加の定義:
$$\\forall x_1,x_2\\in I,\\;x_1– この性質から異なる $x_1\\neq x_2$ には必ず $f(x_1)\\neq f(x_2)$ が成立し、$f$ は単射になります。
– 単射性により、$f(I)$ 上で逆関数 $\\varphi(y)$ を “ただ一つの $x\\in I$ で $f(x)=y$ を満たすもの” と定義できます。これにより
$$f(\\varphi(y))=y,\\quad \\varphi(f(x))=x$$
が自明に成り立ち、逆関数が存在し一意であることが示されます。

2. 逆関数の単調性

– $f$ が狭義単調増加であれば、
$$x_1– この命題を逆に読むと、
$$f(x_1) ただし後者は背理法を使って示します。背理法では「もし $f(x_1) – $x_1=x_2$ なら $f(x_1)=f(x_2)$ となり矛盾
– $x_2 のいずれかが起きるため、必ず $x_1– よって
$$y_1 となり、\\varphi も狭義単調増加です。

3. 逆関数の連続性

– 任意の $y_0=f(x_0)$ を取り、$I$ が開区間だから
$$(x_0-\\rho,\\,x_0+\\rho)\\subset I$$
となる $\\rho>0$ が存在します。
– ここで任意の $0<\\varepsilon<\\rho$ と置くと
$$f(x_0-\\varepsilon) が単調性から得られます。
– 次に
$$\\delta=\\min\\bigl(y_0-f(x_0-\\varepsilon),\\;f(x_0+\\varepsilon)-y_0\\bigr)>0$$
と定めると、$|y-y_0|<\\delta$ であれば
$$f(x_0-\\varepsilon) よって $|\\varphi(y)-x_0|<\\varepsilon$ が成り立ち、逆関数は連続です。

4. 逆関数の微分可能性

– 追加で「$f$ は $x_0$ で微分可能かつ $f'(x_0)\\neq0$」と仮定します。
– 数列 $y_n\\in f(I)$ を $y_n\\to y_0$ ($y_n\\neq y_0$) と取り、対応する逆像を
$$x_n=\\varphi(y_n),\\quad x_0=\\varphi(y_0)$$
と定義します。
– 逆関数は連続なので $x_n\\to x_0$ が得られます。
– 差分商を以下のように分解します。
$$\\frac{x_n-x_0}{y_n-y_0} =\\frac{x_n-x_0}{f(x_n)-f(x_0)}\\cdot\\frac{f(x_n)-f(x_0)}{y_n-y_0}.$$
– $f(x_n)-f(x_0)=y_n-y_0$ だから後者は 1
– 前者は $\\lim_{x_n\\to x_0}(f(x_n)-f(x_0))/(x_n-x_0)=f'(x_0)\\neq0$ なので
$$\\lim_{n\\to\\infty}\\frac{x_n-x_0}{f(x_n)-f(x_0)}=\\frac1{f'(x_0)}.$$
– したがって
$$\\varphi'(y_0) =\\lim_{n\\to\\infty}\\frac{x_n-x_0}{y_n-y_0} =\\frac1{f'(x_0)}.$$
以上により逆関数は $y_0$ において微分可能であり、その導関数は $1/f'(x_0)$ となります。

📚 用語と追加解説

狭義単調増加: $x_1単射: 異なる入力に対して異なる出力を与える。$f(x_1)=f(x_2)\\Rightarrow x_1=x_2$ と同値。
開区間: 区間の両端が含まれない形。任意の内部点は必ず周りに小さな区間を含む。
連続関数と数列: 関数 $g$ が点 $a$ で連続なら、$x_n\\to a$ のとき $g(x_n)\\to g(a)$ が成り立つ。
差分商: $\\bigl(f(x+h)-f(x)\\bigr)/h$ の $h\\to0$ における極限として微分係数 $f'(x)$ を定義する。

📈 応用例

1. 二次関数
$$f(x)=x^2\\;(x>0)\\quad\\Longrightarrow f'(x)=2x\\neq0$$
したがって逆関数 $\\varphi(y)=\\sqrt{y}$ は微分可能で、
$$\\varphi'(y)=\\frac1{2\\sqrt{y}}$$

2. 指数関数
$$f(x)=e^x\\;(x\\in\\mathbb{R}),\\quad f'(x)=e^x\\neq0$$
逆関数は自然対数 $\\varphi(y)=\\ln y$ であり、
$$\\varphi'(y)=\\frac1{y}$$

3. 対数関数: 上記の逆を取ると、$\\ln x$($x>0$)は連続かつ微分可能で、元の指数関数と対称的です。

💡 まとめ

– 逆関数定理により、狭義単調かつ非零傾きな関数は必ず「滑らかな逆関数」を持つことが保証されます。
– 逆関数の連続性は開区間と単調性によって示され、微分可能性は元関数の微分係数がゼロでない点で成り立ちます。
– 各種関数(多項式関数、指数関数、対数関数など)の例を通じて、定理の適用方法や具体的な導関数の計算を理解しましょう。

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以上が逆関数定理の詳細解説記事です。数学講究ゼミや実解析の学習にぜひお役立てください。

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