連続関数は「なめらか」で「飛び越えない」。では、その関数が“最も小さな値”を本当に取るとはどういうことなのでしょうか?極限に近づくことと、実際にその値を達成することは、数学的にどう違うのでしょうか?この記事では、解析学の基本でありながら応用でも頻出のWeierstrass(ワイエルシュトラス)の極値定理を通じて、“最小値・最大値の存在”というテーマに迫りながら、なぜその存在が保証されるのか、どんな条件で失敗するのかを丁寧に見ていきます。
✅ 極値定理の主張
Weierstrass極値定理:閉区間 [a,b] 上の連続関数 f:[a,b]→ℝ は、有界であり、かつ最大値と最小値をとる。
∃x₀, x₁ ∈ [a,b] such that f(x₀) = min f, f(x₁) = max f
この定理の魅力は、「極限を取れば値に近づく」だけではなく、「その値に実際に到達する点が存在する」という点です。
📏 有界性とは何か?
Weierstrassの極値定理は以下の2段階に分かれます:
1. 有界性の保証:|f(x)| ≤ M となる定数 M が存在(f が暴れない)
2. 極値の存在:inf や sup を“実際に取る”点が存在する
この土台があることで、最大値や最小値という議論が初めて意味を持ちます。
🧠 証明のアイデア:列と部分列
1. m = inf{f(x): x ∈ [a,b]} を定義
2. f(xₙ) → m となる列を構成
3. [a,b] のコンパクト性 ⇒ BW定理で部分列 xₙₖ → x₀ がとれる
4. f の連続性により、f(x₀) = lim f(xₙₖ) = m
5. よって最小値を実現する点 x₀ が存在
最大値も −f に同様に適用可能。
🧮 supとmaxの違い
– sup f:上限(値に近づけるが取るとは限らない)
– max f:最大値(実際にある x でその値を取る)
Weierstrass定理は「sup = max」「inf = min」が成立する条件を与える。
✍️ 例:開区間では成立しない
f(x) = x on (0,1) は sup = 1 だが f(x) = 1 となる x は存在しない。
⇒ 閉区間であることが極値保証の鍵。
🌐 実解析や応用での重要性
– 数学解析:積分評価や平均値定理における評価値の存在保証
– 最適化:最小値が存在することが前提になる
– 数値計算:アルゴリズムの収束先の存在保証
– 関数解析:バナッハ空間など抽象空間への一般化の基礎
🧩 まとめ
– 閉区間×連続 ⇒ 常に min/max が存在
– sup/inf と max/min の違いを理解することが解析の基礎
– 有界性とコンパクト性(閉+有界)が定理成立の本質
→ “近づくだけではダメ。到達できるからこそ意味がある。”──それがWeierstrassの極値定理の真のメッセージです。
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