なぜ今、「大量絶滅と生命進化」が注目されるのか?
近年、気候変動や生物多様性の危機が世界的に議論される中で、「地球史上の大量絶滅」と「生物の進化の節目」が再注目されています。これは、過去の出来事を理解することが、未来の地球や人類の在り方に直結するからです。
本記事では、科学的知見に基づき、以下の3つのトピックをわかりやすく解説します:
1. ペルム紀末の大量絶滅
2. カンブリア爆発における進化の急加速
3. 縞状鉄鉱層の形成と酸素の起源
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過去最大の絶滅事件:ペルム紀末とは?
約2億5,100万年前、地球はかつてない規模の生物大量絶滅を経験しました。これが「ペルム紀末の絶滅」です。
– 絶滅率:海洋種の約90〜95%、陸上脊椎動物の約70%
– 要因:
– シベリア・トラップと呼ばれる超大規模火山活動
– 大気中のCO₂濃度上昇による温暖化
– 海洋の酸性化・無酸素化
この出来事は「生命のリセット」とも呼ばれ、新たな生物群が生き残り、のちの中生代(恐竜時代)へとつながります。
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動物の体の設計図が生まれた「カンブリア爆発」
カンブリア爆発とは、約5億4,100万年前に生物の形態的多様性が爆発的に広がった現象です。
– 何が起きた?
– 多くの動物門(節足動物・脊索動物・軟体動物など)が短期間で出現
– なぜ起きた?(複数要因説)
– 酸素濃度の上昇
– 遺伝的な「HOX遺伝子」の進化
– 捕食−被食関係の誕生と進化競争
この爆発的多様化がなければ、現代の多細胞動物の多くは存在しなかった可能性があります。
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縞状鉄鉱層が語る、酸素と生命のはじまり
縞状鉄鉱層(Banded Iron Formation, BIF)は、地球初期の酸素出現の証拠です。
– いつ? 約27億〜18億年前に多く形成された
– どこで? 主にインド、カナダ、オーストラリア、南アフリカなど
– どうしてできた?
– シアノバクテリア(藍藻)が光合成により酸素を大気中に放出
– 溶存していたFe²⁺(還元鉄)と酸素が反応し、Fe³⁺(酸化鉄)となり沈殿
この酸化鉄が、現在も採掘される鉄鉱石の元となっています。
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生物多様性に影響する因子は「環境」だけじゃない?
生物が多様化する要因には以下のようなものがあります:
– 資源の豊富さ(食物・生息地)
– 環境の物理的条件(温度・酸素量・光など)
– 他の生物との相互作用(捕食・共生・競争)
一方で、「どの時代でも同じ生物が多様化する」といった記述は明確な誤りです。実際には、時代ごとにまったく異なる生物群が繁栄しており、それこそが進化のダイナミズムです。
たとえば:
– 中生代:恐竜・裸子植物が繁栄
– 新生代:哺乳類・被子植物が支配的
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まとめ:46億年のドラマに学ぶ、私たちの未来
– ペルム紀末の大量絶滅は、「地球規模の危機」がいかに生態系を一変させるかを物語っています。
– カンブリア爆発は、進化の創造性が環境や遺伝の条件と結びついた瞬間でした。
– シアノバクテリアによる酸素の誕生は、地球環境を根本的に変えました。
これらの事実は、人類が地球の歴史の「末端」にいる存在であること、そして自然界の変化に絶えず適応していかなければならないという教訓を私たちに与えてくれます。
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参考文献
– 西村祐二郎『基礎地球科学 第2版』(朝倉書店, 2010)
– 丸山茂徳・熊澤峰夫『全地球史解読』(岩波書店, 2002)
– 平朝彦『地質学I 地球のダイナミックス』(岩波書店, 2001)
– 国立科学博物館・JAMSTEC 資料
今後も地球史から学び、自然との共生を考えていくことが求められています。
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